塩屋の坂道、登り方|万代貴子(yamne)

2022.10.08

「坂道を登るのは人生と似ている」
というのは、誰の名言でもなく私のペラペラな持論だ。私は2年ほど前から塩屋のものすごい坂道の先にある平屋の一軒家でギャラリーを始めた。最初に物件の内覧に行ったときはこの坂道を特にキツイとも感じずにスタスタと導かれるように登れてしまい、一目惚れに近いこの平屋にそのまま即契約。

改装を進めている途中でふと我に返り、「え、この坂道ってめっちゃきついのでは・・・」という衝撃の事実に気付いた。そうこう言いながらも始めると言った手前、今更引き返すことなんかできず、後付けのように「気合いのある、来たい人だけ来たらええんや」という強気営業スタイル風でなんとか細々と続けている。

坂道を登って来たお客様たちの反応は本当に様々でドアを開けた瞬間大体の方が「思ってたよりすごい坂道でした~!」と、なぜか大爆笑。釣られて私も大爆笑してしまい、そのまま楽しく会話がスタートすることも。中には汗だくでややキレ気味の方もいるのでちょっぴりこちらはビクビクするときもある。

色々な人たちの坂道の登り方を聞いているとあることに気付く。坂道のきつさではなく、体力の無さ、とかではなく、知らない坂道に焦って登ることがしんどいのでは・・・?(もちろん足の不自由な方やご高齢の方など、無理なもんは無理な場合もある)実際にリピーターの方は「坂道慣れてきました。」や「あの坂道病みつきになります。」という方も多い。

未知なる“不安”に焦りはつきものなのだ。
なので坂道の登り方のコツをお伝えしたい。
それはとても簡単なこと。
” マイペースに、ゆっくり楽しむ ”ということ。

塩屋という町だからこそ感じる四季折々の景色を眺めながら。
途中の変な看板や廃墟にワクワクドキドキしながら。
登りきった先では山の谷間から淡路島まで一望できる。
坂道の途中の木陰は涼しくて気持ち良い。

道が分からない不安はひとまず置いておいて、自分を信じてのんびり登れば良いのだ。
日々焦ったり不安な気持ちを抱えながら生きて行くのは辛い。
それは、坂道を登ることにも似ている気がする。

せっかく登るなら、楽しまなくちゃ損じゃない。
焦ったって仕方ないじゃない。

そんな持論に至った私は、雨の日も夏の暑い日も、なんなら遅刻しそうな日だって、コツコツとマイペースに坂道を登っている。(下りはめっちゃ早い。)