アキラッチの毎日登山|大川陽(ピザアキラッチ)

2022.10.27

 毎朝6時頃、旗振山に登っている。犬の散歩で塩屋中歩き回った結果、犬のそれは旗振山への登山道が最適と判明した。塩屋は道が狭く、このままでは我が家の活発ワンちゃんが車という恐ろしい箱に轢かれてしまうのでは?という心配から導き出された最適解である。
かれこれ4年ほど登り続けていると毎日すれ違う老若男女と顔見知りになる(ほぼ9割老、男女の判別は不能)。すれ違う時に「おはようございます!」と軽やかに挨拶をする。さながら羽衣をまとっているかのように軽やかに、艶やかに挨拶をする。
皆さん、「おはようございます。」と返してくれる。「おはようさんっ!」と江戸っ子気質のおっちゃんもいる。先祖が江戸出身なのだろう。中には挨拶不可の人もいる。その人は大音量でラジオを聴きながら登っているのだ。耳が遠いゆえのラジオ大音量なのでこちらの軽やかな挨拶はまるで付け入る隙がない。やむなく、目が合った時に会釈する事で「あいつは挨拶をしない若者だ」というレッテル貼りからかろうじて逃れている。こんな人もいる。その日は朝から台風直撃、とても山なんて登れる状況ではなかったのだが雨は止んでいた。毎朝登山ハイ状態だった当時の私は「すわやっ!」と三国志の武将ばりに飛び起き、山へと向かった。猛り狂う風雨を物ともせず登頂するといつも「おーはよーうさーーーん!」(ハーヒフーヘホーー!と同一アクセント)と元気よく挨拶してくれるF本さんというパイセンがいた。もちろん登山者カテゴリーは老。自分しか登っていないだろうと思っていた私は思わず「こんな台風の日にも登ってはるんですね!」と悔しさとリスペクトの狭間のような震える声で話しかけた。するとF本パイセンは「台風?台風やからって登らへん理由にはならんやろ。」と言った。「いや、なるやろ。」と心の中でツッコんだ。
塩屋のどこからでも30分も歩けば山頂へ行けるほんの253メートルの高さしかない里山・旗振山。登ってみるとあっと驚く景色、あっと驚く出来事、そして何よりあっと驚くほど日々の生活が充実する。皆さんも一度登ってみる事をオススメする。というか登らずして塩屋住民と称する事を禁ずる!笑

大川陽(アキラッチ)
塩屋駅高架下「ピザアキラッチ」店主。座右の銘「泣いて馬謖を切る」。好きな食べ物「カニクリームコロッケ」。

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