「世界で一番住みたいとこは?」と聞かれたら、ミュンヘンやグラスゴー、ブリュッセルやストックホルムとか思い浮かべるけど、自分はやっぱ塩屋かな、と思う。海と山に挟まれて細ぐにょぐにょした道や商店街は、無国籍ノスタルジックな夢に出てきそうだ。
昨日、塩屋駅前の魚一で、寿司とハタハタとグチの南蛮漬けを買ってみたら、どれも大変美味しかった。グチって魚は全く知らないので、どんな姿か想像もできないまま食べたけど、これは毎日でも食べたい。
いくつかの思い出、、、いつも中島みゆきがかかっているとても女性贔屓のおじさんがやっているこまどりという喫茶店がお気に入りだった。男だけだと注文したものしか出てこないけど、そこに女性が入るだけで、トーストやそうめん、ウイスキー水割りなどがオートマティックにサービスされた。おじさん、ある日突然なくなってしまったそうで、店はそのまま哀しく朽ち果てていて、今では商店街の途中のもう誰も気にしないただの風景の一部になっている。
友人のトランペッターNYくんが塩屋に引っ越してきた時、一緒に海岸を歩いた。テングサがたくさん打ち上がっていて、自分がここに住んだら、まずあの木の箱のトコロテン製造器を買うだろうな、と思った。他にもカメノテやニイナ、ジンガサガイがあって、親父がアワビオコシと呼んでいた、あの鉄の平たい棒みたいなやつも必要だな、と思った。NYはその後、釣りにズッパマりしてシオヤフィッシングクラブという釣りクラブのタオルや帽子を作っているようだ。自分は短気だが釣りは苦手で、潜りの方が好きだな。自分が死ぬ時は、自宅からふらっと歩いて海に静かに入っていきたい。そんで魚とか微生物とかの糧になって、最後ぐらい自分の体を自然に還元したいかな。
一方、山歩きも最高だ。一度、塩屋から山の中をズンズン歩いていたら遊園地に出てしまって、妙にファンタジーに感じたことがあった。わーこんなとこに誰も知らない魔法の国がー!?て感じだった。
そして、すべてが旧グッゲンハイム邸ありきだ。建物はもちろんだが、庭の昼の景色も夜の景色も好きで、そこに佇んでいるとなんだか自分は昔からずっとここにいるような気がしてくる。昨日、庭でメジロが死んでいて、二階の窓にぶつかってしまったのだろう、特に外傷もなくてキレイな姿のままだった。一緒に録音していたアレックスとマティアスと木の根元に埋めた。その後、Lonnie Liston Smithの「A Garden Of Peace」という曲を録った。プレイバックしながら庭を見てたら、マティアスが隣にきて「俺の最新アルバムは、レコード1枚ずっと鳥の声だけなんだ」と言った。自分なら塩屋に住んでいても、グッゲンでライブやったらつぶれてその辺で寝るまで飲んで、夜明け前にハッと目を覚まして海の日の出を眺めながらコーヒーを飲んで電車が走り出すのを見て今まで生きてきたことが奇跡みたいなものだ、と思うだろう。そしてそれが塩屋に住まない、住めないREASONなのだ。だって、そんな奴ウザいじゃん。
この文章を盗み見したグ長屋の最古株RSちゃんが、「塩屋は寛容だから大丈夫ですよきっと」と言った。寛容、、、ロクデナシにとって最高の場所じゃないですか。