記録|シオヤプロジェクトの勝手にまち探訪 vol.56 新湊川編

2024.02.08

湊川は神戸を代表する繁華街の1つだ。昭和の名残を詰め込んだ商店街はまちあるきの人気も根強い。しかし地名としての湊川に対して、河川としての湊川は僅か数百メートルだ。近代化遺産になった湊川隧道は新湊川のスタート地点だ。長田区は新湊川の建設を機に神戸市に合併された。会下山をトンネルで抜けた先には、川沿いを埋め立てて住宅街が生まれた。門前町として栄えた長田神社商店街で苅藻川と合流する。昔ながらの苅藻川は新湊川に乗っ取られた形だ。
西国街道と交差する新湊川大橋は山陽電鉄沿いの細い砂利道だった。鉄道の地下化や震災後の防火帯、高速道路の建設で巨大化していった。 新湊川の河川敷は地下に阪神高速北神戸線が通っており、公園の中に災害時の非常階段が配置されている。湊川インターは国道と新湊川の交差地点を活かしたおかけで、阪神高速神戸線では珍しい4方向フル形式のインターとなった。高速道路はさらに新湊川の河口のシンボルであるガスタンクまで続いている。現在ここに繋がる阪神高速の湾岸線が建設中で、長田の海沿いの新たなシンボルとなるだろう。
沿岸部は漁師町だったが埋め立てで工業地化が進んだ。農地部分も兵庫の造船所から連なる製造業やマッチ製造に端を発した中小工業、輸送業や職住近接による飲食店街などで急速に発展していった。今では商店街のアーケード撤去や再開発が進んでいるが、かつて縦横無尽に張り巡らされた商業地の姿を色濃く残している。
神戸の市街地は南北に流れる天井川の影響が強い。しかし人口的に作られた新湊川に沿って歩くと、川筋を軸としない少し違った視点から街が見えてくるのではないだろうか。

文 松村真人 写真 森本アリ

INFORMATION

2023年度の勝手にまち探訪は兵庫区率が高い。6月「雪御所」、7月「会下山」、9月に新開地アートひろば主催の「勝手にまち探訪」番外編として行われた「旧湊川を探る」に続く、今回が「新湊川」。天王谷川と石井川が合流し湊川となり、かの川は埋め立てられ神戸有数の繁華街「新開地」となった。その新開地本通りをまっすぐ北にゆき、湊川公園を抜けて東山商店街の北詰めまで遡る途中には、みんな大好き冷やしあめとレモン水の「鼻知場商店」、三色のれんが目にもたのしい「稲田串カツ店」、そして創意工夫を重ねる「マルシン市場」。「きょうも元気に営業中」のマルシン市場に並行して流れる「新湊川」。新湊川を開削し、明治の大土木工事、日本初の河川トンネル湊川隧道ができて、震災後に改築され「新湊川隧道」が竣工。その先から河口まではあまり知らない気がする。西へ西へ長田まで。長田で苅藻川と合流、合流地点に「新湊川公園」という地理的に混乱する名称も存在し、川の名前は新湊川に乗っ取られるが、苅藻島で海に合流する。普段からそこにある何の変哲も無い川の連なりを見直しながら考える。喋り出したら止まらない松村真人さんのレクチャーも予定しています。

案内人:松村真人(まつむらまこと)さん

日  時:2023年10月27日(金) 10:00集合 17:00頃解散
探訪場所:新湊川沿いエリア
集合場所:湊川公園 ふわふわドーム前
料  金:1,000円(レクチャー付)

主催:シオヤプロジェクト
令和5年度 神戸市・まちの再生・活性化に寄与する文化芸術創造支援助成対象事業

 予約・お問い合わせ:塩屋百景事務局

TEL:078-220-3924 E-mail:info@shiopro.net
※前日までにご予約ください。
※ご参加日、お名前、電話番号、参加人数をご連絡ください。
メールの場合はこちらからの返信をもって予約完了とさせていただきます。

松村真人
フリーライターの都市鑑賞家。炭鉱街の消えゆく風景を皮切りに、街の景観を交通や都市計画の変遷から紐解く。TV番組やトークイベントで都市観察の解説を続けている。未完成に終わった道路や鉄道、都市計画を追っている。2011年より商業誌で執筆、2020年に単著「走らなかった鉄道未成線を追う」を出版