



















またまた「しおやカルタ」の読み札から。
て「テクテクと 登って振り向き 海みえた」
ゆ「悠々と 塩屋谷川 鯉のぼり」
この坂は塩屋を縦断する2つの道の1つ。町の中心である塩屋郵便局と神戸信用金庫と民部谷橋辺りから、世の中的には結構な坂だけど塩屋的にはなだらかな坂を、塩屋台1丁目の十字路まで約1km登り続ける。
今なら塩屋谷川の鯉のぼりを「今年は今までで一番立体的だなー(それは美術家・飯川雄大にシステム構築を手伝ってもらい吊り具を新設したから)」と眺めることから始まり、高低差の激しい住宅地を東西に感じながら、しおやこどもえん前の真っ赤な滑り止めがびっしり貼られた地獄坂におののき、そして蛇行する塩屋谷川と意外と豊かな川べりの緑に多様な生物が棲んでそう、と呟いていると、視界には塩屋小学校のグラウンドが山あいの村の小学校みたいなグッドロケーションで立ち現れる。2016年に784JUNCTIONCAFEで開催された、シオヤプロジェクト主催による写真家・長島有里枝の(塩屋の写真のみの)展覧会「坂、階段そして海」のメインビジュアルにもこの校庭の写真が使われた。今回歩いた時も子どもたちの体育の授業がとても可愛いかった。
さらにすこし登ると、階段状の公園「獅子掛公園」の下に、通称「シルバーの休み処」が出現。ここにはいい感じの木の切り株椅子とベンチがあり、その名称通りの場所になっていたのだけど、それらの座る装置が苦情により撤去された。本当によく機能していたので、復活を画策している。その時はしっかり筋道を立てて、必要性・必然性を明示しないといけないと思ってる。
そこからもうすこし登ると、今度は右手(東側)に開墾と庭園化が進む素敵な緑地SIO9(塩屋町9丁目市住跡地)。左手(西側)には谷を挟んで立体的に迫る塩屋最高の斜面住宅地「望海台団地」(塩屋町8丁目)。両側に両目を奪われる平坦な道がわずかな間続く。この道を覆うように伸びる楠の大木も大好きだ。
これで8合目あたりまで到達か? この平坦な道が直角に折れる角に現れるのは通称「塩屋のピカソ」。道路に面した家の庭と向かいのフェンスに展開される「あふれだし」。最高。その向かいによく似た形の家が4軒、階段のように肩を並べている風景も○。
あと少し。「ようこそ!塩屋台へ」と色あせた大きな地図看板が現れる! 最後の坂を一気に登る。右に左に目を向けると塩屋台公園の大池の気配と、塩屋町9丁目へ降りる階段も面白いので気が抜けない。そしてたどり着いた十字路。
「テクテクと 登って振り向き 海みえた」
しみじみ思う。この坂道の名前がない。
人それぞれ便宜上の呼び名はありそうだ。
登り切ったところにあるこの十字路を北へ下る坂は知る人ぞ知る坂だったりする。テレビドラマ「すいか」「野ブタ。をプロデュース」などの脚本で知られる夫婦脚本家・木皿泉が塩屋に仕事場を構えていたことがあり(仕事場の紹介、そして彼らの自宅の壁という壁の本棚を作ったのは私。これは自慢)、NHK・BSで放映された「しあわせのカタチ〜脚本家・木皿泉 創作の“世界”〜」の中で、薬師丸ひろ子が横領した現金2億円を入れたバッグを放り投げ、そのカバンがコロコロ転がるというシーンのロケ地なのだ。なのでこちらは通称「ひろ子坂」「2億円坂」「2億円ごろごろ坂」などと呼ばれる(私の中で)。
さあ、登り切った。お疲れさまと振り返って一気に海に向かって走り下りるもよし。実際とても気持ちよさそうに自転車や単車で坂を下る人たちは多い。もちろんゆっくり下りてください。あるいはそのまま塩屋台・塩屋北町の散策をするもよし。
坂に名前があったらいいですね。去年「坂のまち神戸プロジェクト」をシオヤプロジェクトでお手伝いして、「坂に名前をつけると愛着がわく」等の話がいくつもあった。勝手にやろうかな、「坂に名前をつけよう、塩屋」。
文・写真:森本アリ(旧グッゲンハイム邸|シオヤプロジェクト|三田村管打団?|音遊びの会)


